その1はこちら
A社の社長はB社の従業員の話を聞く内に、何人かの運転手が同じような悩みを持っていることに気が付いた。それは、車両の始業点検の煩わしさだった。運転手はそれぞれに車両を割り当てられているが、その車両を毎朝始業前に点検する作業が課されていた。運送会社として、車両の安全運行をするためには当然の作業ではあったが、それだけに運転手にとっては煩わしい作業であった。特に週の初めには、念入りな点検マニュアルがあり、作業には小一時間を要したので、月曜日の朝、運転手は早朝出勤しなくてはならなかったのである。
運転手の悩みを知ったA社の社長はじっくり思考を巡らした結果、素晴らしい提案事項を発見し、早速B社の社長に提案した。それは、月曜日の全車両の点検を、A社が引き受けるということである。A社は車両の構造に関するプロであるから、運転手よりも正確に、しかも素早くできること、異常があれば適切なアドバイスができること、運転手の早朝出勤が不要になり負担が減ること、それにより早朝手当も不要になることなどなど、そのメリットをしっかり説明し、しかもその作業を無料で行うことを提案した。
B社の社長はその提案に驚いたが、断る理由などあるはずもなく即決で受け入れた。それから毎週月曜日は、A社の全員でB社に出向き、手早く全車両の点検を実施し続けた。車両構造のプロが点検をするのであるから、車両の状況は明らかに改善され、運転手の負担も大きく軽減された。
そして、A社にも大きなメリットをもたらすことになった。点検した結果、異常が発見されれば、その改善に必要な処置と費用を提案し、当然のことながら、その仕事は全部A社が引き受けることになった。こうして、A社とB社はお互いになくてはならない存在となり、その後、A社の業績も向上していったのは言うまでもない。