経営者の目の色が変われば企業は変わる。(N工務店のV字回復)
業績が著しく悪化した中小企業を、苦境から救い上げるために、全ての都道府県に「中小企業再生支援協議会」という国の公的支援機関が設置されています。事業自体は政府から委託された商工会議所などが行なっています。金融機関経験者や中小企業診断士等の専門家が常駐し、相談を受け付けていますが、中長期的なアドバイスが必要と思われる場合は、外部専門家(中小企業診断士、税理士、弁護士等)がチームを組み企業に派遣され「再生計画策定支援」を実施します。筆者も外部専門家として、少なからぬ企業の再生のための支援に携わってきました。
ある都市の中堅建設業者N工務店が苦境に陥り、主力銀行から中小企業再生支援協議会へ、てこ入れの申し込みがありました。そして、建築に詳しいという理由で筆者に外部専門家の指名がありました。
3ヶ月にも及ぶ経営者からの聞き取りや、様々な調査・分析などを経て、それからまた3ヶ月後に事業再生計画書が出来上がりました。最後に社長から“今後の取り組みと覚悟のほど”を発表して貰って一段落ついたその席上、税理士の先生が、「このままでは再生は非常に厳しいと言わざるを得ません。」という発言をしてしまいました。
税理士としては、「だから、しっかり頑張りなさい!」と励ましたのかもしれませんが、経営者の耳には「もうダメだ!」と響き渡ったのです。会合が終わって帰ろうとする筆者を引き止めて、社長が「悔しいです!悔しくてたまりません!絶対に立ち直してみせます!」と顔を真っ赤にして訴えて、「先生、経営顧問として支援してもらえませんか?」と要請されました。その時の社長の目には真っ赤な炎がメラメラと燃え盛っているように見えました。私もその勢いに引き込まれ、その場ですぐに受諾しました。
それから7年後、幸運にも恵まれましたが、社長の奮闘努力が実を結び、業績はV字回復どころか、無借金状況を実現させてしまいました。まさに、経営者の目の色が変われば企業はどうにでも変わる、というのを目の当たりにすることができました。
今でも社長が私と会えば言います。「あの時の、税理士の言葉が私に火をつけました。」と。