企業がさらに業績を伸ばすにはどうしたら良いか、どんな方向へ進めば良いか、ということを検討する際に、非常に便利なツールとして、「アンゾフの成長ベクトル」がある。
これは、「製品・市場戦略」とも言われるように、横軸に製品、縦軸に市場を取り、それぞれに既存と新規に分け、それによって分割された四つのマトリックス(象限)に、成長のための戦略が存在する、と説いたものである。図示すると下のようになる。
この四つの中で、中小企業が最も取り組みやすい戦略は市場深耕戦略であろう。今の市場をもっと深く耕して、隠れたニーズを掘り起こし、売上を増やそうそうという戦略である。これは現在のお得意様に現在取り扱っている製品をお売りするのであるから、特段大きな費用は発生しない。とは言っても、既に買って頂いているのだから、それをもっと沢山の買って下さいというのは簡単ではない。大方、いま間に合っているよ、と言われるのがオチであろう。じゃあ、どうすれば良いか。そんな時有効な手段として「提案営業」がある。
消費者や企業の多くは何らかの問題を抱えているものであり、それを解決して差し上げようという「問題解決型営業(ソリューション・ビジネス)」である。だからと言って、「何かお困りのことはございませんか?」という上滑りな営業をしても、簡単には受注に結びつかない。まず、お得意様の事務所や作業場の様子、あるいは従業員の動きなどをよく観察し、その中に潜んでいる問題点を発見し、それを解決するための製品やサービス、手段などを考え出して提案することである。
市内のA自動車修理工場は、B運送会社と長い取引があるが、最近、修理やタイヤの売上が落ち込んできた。どうやら市内の同業者C社の低価格攻勢の影響らしい。そこで、A社の社長はB社に足繁く通い、会社の様子の観察や運転手との対話などを通じて、色々と考えた結果、素晴らしい提案事項を発見した。(次号に続く)
その2はこちら